近年のゲーム市場では、パッケージ版とダウンロード版という二つの形態が主要な販売方法として定着しています。過去には全てがパッケージ版での提供でしたが、現在はダウンロード版が一般化し、重要な選択肢となっています。
そんな中、インターネット上には「プレイステーションのパッケージ版は時代遅れだ」という意見も見られます。
しかし、実際にはどうなのでしょうか?私は以前ゲーム業界に関わっつていましたが、その経験と長年にわたる売上の動向を見てきた視点を元に、パッケージ版の現状を詳しくお話しします。
プレイステーションのパッケージ版、まだ市場は健在
はっきり言っておきますが、「プレイステーションのパッケージ版をもう誰も買っていない」というのは間違いです。実際には、パッケージ版の販売はまだ活発に行われています。
例えば、2023年に発売された「ファイナルファンタジー16」は、発売初週で33万本を売り上げました。これは「プレイステーションのパッケージ版が売れない」という声に反しています。
パッケージ版もダウンロード版も、どちらも多くのユーザーが利用しており、特にパッケージ版には安定した需要があります。
「ファイナルファンタジーだからこそ売れたのでは?」と考えるかもしれませんが、2024年1月には「龍が如く8」がPS4とPS5で合わせて約17万本、同じく「バイオハザードRE4」が約17万本を売り上げました。これらのデータからも、人気シリーズの新作はパッケージ版でも高い売上を維持しています。
もちろん、売上が伸び悩むソフトもありますが、それはダウンロード版の影響ではなく、そのゲーム自体が市場に受け入れられなかったからです。したがって、パッケージ版の売上自体に問題があるわけではありません。
これらのことから、プレイステーションのパッケージ版の市場はまだ広がりを見せており、多くの人々が引き続き購入していることが明らかです。
ダウンロード版の売上が主流との誤解を解く
多くの人が「ダウンロード版が市場を席巻している」と考える傾向にありますが、実際のプレイステーション市場においてダウンロード版の売上が非常に高いわけではありません。一般的には、全ゲーム売上の約40%から60%がダウンロード版とされています。
この誤解は、いくつかの要因により生じています。特に、企業が公開する決算資料に示されるパッケージ売上とデジタル売上の数値を直接比較することが誤解を招きやすいです。
決算資料のデジタル売上には、ダウンロード専用のゲームや追加コンテンツが含まれているため、これをパッケージ版の売上と直接比較することは不適切です。この点が見落とされると、デジタル売上が圧倒的に多いとの誤解が生じることがあります。
さらに、メーカーが発表する売上数字には世界全体のデータや出荷本数が含まれることがあり、これが具体的な国内市場データと異なるため、ファミ通などの詳細な売上データと比較した時に誤解が起こりやすいです。
実際には、ダウンロード版とパッケージ版が両方リリースされているゲームにおいて、売上比率が1:9や2:8に達することは非常に稀です。したがって、デジタル売上が主流であるという見解には慎重な検討が必要とされます。
FF16を例に見るパッケージ版の市場動向
「ファイナルファンタジー16(FF16)」の販売データを見てみると、ファミ通による日本国内のパッケージ版の売上は約33万本で、これは発売後4日間の集計結果です。一方、開発元が発表した全世界での総売上は「300万本」となっており、これにはダウンロード版の売上も含まれていて、集計期間は発売後1週間です。
このデータを元に分析すると、日本国内でのパッケージ版の売上が33万本という数字をもって、ダウンロード版が全売上の8割から9割を占めると仮定すると、非現実的な計算になってしまいます。なぜなら、それによると世界全体の売上の大部分が日本の売上であることになってしまうからです。海外売上の実情や集計期間が長いことを踏まえると、ダウンロード版の売上比率が半分程度、あるいはそれを少し超える程度であることが妥当とされます。
他のヒット作、例えば「バイオハザードRE4」や「龍が如く8」の売上を見ても、これらが初週で100万本を超えるということは実際には起こっていません。これらの情報からも、プレイステーションのパッケージ版には依然として強い需要があることが伺えます。
他のゲーム機との比較
プレイステーションと比べると、任天堂のハードはファミリー層からの支持が厚く、特にパッケージ版のゲームに対する需要が強いです。ギフトとしてもパッケージ版が好まれる傾向にあり、「スプラトゥーン3」や「ゼルダの伝説」シリーズのようなタイトルでは、パッケージ版の売上が特に高いことが見受けられます。
一方で、XBOXは日本市場においては人気が低めで、市場に出回るパッケージ版のゲームが限られています。このため、XBOXにおける売上はダウンロード版が中心となっており、日本においてはデジタル販売が最も進んでいるゲーム機と言えるでしょう。
まとめ
プレイステーションにおけるパッケージ版の売上は今も健全であり、一部で見られる「プレイステーションのパッケージ版を買う人はもういない」という意見や「ダウンロード版が売上の8割を占める」という主張は間違っています。これらの見解には根拠がなく、現実とは異なるため、注意が必要です。
消費者として、パッケージ版とダウンロード版のどちらを選ぶかは個人の好みによるものです。どちらの形式もそれぞれ利点を持っていますので、自分に合った方を選んで楽しむことが重要です。